実施報告書
報告者:スタッフめぐ
こくみん共済 coop 地域貢献助成を受けて2026年に立ち上げた 『震災を知らない子供たちと一緒に震災復興地で次世代へつなげる環境の学びを 親子で!』プログラムの第三弾を実施しました。 本来は6月7日1回のみの開催を予定しておりましたが、予想を上回る多くのお申し込みをいただいたため、 6月13日にも追加開催し、今回は2回にわたって実施する運びとなりました。 本報告書では、その2日間の活動内容をあわせてご報告いたします。
近年、社会全体では急激な物価上昇が家計に大きな影響を及ぼしており、食材や燃料、日用品に至るまで、 あらゆるものの価格が上がり続けています。こうした状況は、子育て世帯にとっても決して小さくない負担となっており、 日常生活の中で「体験」にかけられる余裕が少しずつ失われつつあるように感じます。 あわせて、都市化の進行や生活様式の変化により、子供たちが自然環境の中で学ぶ機会そのものも以前より得にくくなっています。 だからこそ、親子で土に触れ、作物の成長に寄り添い、収穫の喜びを分かち合う時間には、 単なるレジャーではない、大きな教育的価値と地域的意義があると考えています。
活動の概要
6月7日、6月13日ともに晴天に恵まれ、とても暑い一日となりましたが、まさに野菜収穫体験日和とも言える天候でした。 活動地は、東日本大震災の復興農地として12年間にわたり、有機肥料を中心に丁寧に土づくりを重ねてきた農地です。 津波被害を受けた土地が、長い年月と多くの人の手を経て、再び命を育む畑として息を吹き返していること自体が、 この活動の大切な学びの土台になっています。
今回の収穫体験では、『玉ねぎ』の収穫を親子で行っていただきました。 この玉ねぎは、昨年9月に子供たちが播種し、11月に植え付けをしたもので、収穫までに約9カ月を要します。 種をまく、苗を植える、冬を越える、春を迎える、そして初夏に収穫するという長い時間の流れを通して、 作物は決して一朝一夕には育たないことを、子供たち自身が体感できる取り組みとなりました。
当日は、まだ前回までよちよち歩きだった子が、今回はしっかりと自分の足で畑を歩き、 両手で力いっぱい玉ねぎを抜こうとする姿も見られました。 子供の成長と作物の成長、その両方を同じ場所で見届けられることは、この継続型プログラムならではの魅力であり、 スタッフとしても胸が熱くなる場面でした。 震災後の復興の時間、畑が再生していく時間、そして子供たちが育っていく時間が重なり合うことで、 この活動にしかない深い意味が生まれているように感じます。
収穫体験の内容
収穫した玉ねぎは1種類ではなく、各家庭の実態や好みに合わせて選べるよう、 3品種を用意しました。健康成分ケルセチンを1.5倍含む『ケルタマ』、 東北を代表する中晩生品種『奥州』、そして甘みが強い黄金品種『トップゴールド』です。 それぞれに味や特性が異なるため、「健康を意識して選ぶ」「保存しやすさを考えて選ぶ」 「甘くて食べやすいものを選ぶ」といったように、収穫そのものが家庭の食を考えるきっかけにもなっていました。
一見すると、玉ねぎの収穫は「抜くだけ」の簡単な作業に見えるかもしれません。 しかし実際には、小さな子供たちにとって相当な重労働です。 玉ねぎにはおよそ60本程度の根がしっかりと張っており、土の中で力強く踏ん張っています。 そのため、子供の力ではなかなか抜けず、体を後ろに反らせたり、何度も持ち直したりしながら、 一生懸命に挑戦する姿があちこちで見られました。
1個採るだけでも大変な作業ですが、多いご家庭では100個近く収穫しており、 子供たちにとっても保護者の皆様にとっても、かなりの達成感があったのではないかと思います。 途中で「もう無理かも」と言いながらも、1個抜けるたびに顔がぱっと明るくなる様子はとても印象的でした。 こうした経験は、普段スーパーに並んでいる野菜の背景にある手間や時間、労力を実感する貴重な学びにつながります。 食べ物が簡単に手に入るように見える時代だからこそ、その裏側を身体で知ることの価値はますます大きくなっていると感じます。
親子で過ごす時間と、それぞれの学び
畑の中では、本当にさまざまな親子の姿が見られました。 夢中になって最後まで玉ねぎを収穫し続ける子、 途中で虫や花に興味が移って畑のあちこちを観察し始める子、 それを少し離れたところから微笑ましく見守る保護者の方、 一緒になって汗をかきながら収穫に取り組む保護者の方。 どの姿もとても自然で、それぞれの家族らしさがあふれていました。
同じ体験の場にいても、子供の反応も、保護者の関わり方も、一つとして同じものはありません。 しかし、その違いこそが豊かさであり、「親子で学ぶ」というこのプログラムの本質なのだと思います。 決められた正解をなぞるのではなく、自然の中で過ごす中で、それぞれが自分なりの関心を持ち、 それぞれのテンポで学びを深めていく。そうした余白のある時間は、今の社会では意外と得がたいものです。
特に、震災を知らない世代の子供たちにとって、この場所は「災害の記憶を学ぶ場」であると同時に、 「いま生きている地域の環境を感じる場」でもあります。 復興とは建物や道路が整うことだけではなく、土地が再び作物を育み、人が集い、次の世代がその意味を受け取っていくことでもあります。 その意味で今回の活動は、震災復興地で次世代へつなげる環境の学びを親子で体現する、 まさに本プログラムのテーマどおりの時間になったと考えています。
食の体験を通じた実感
収穫体験の後には、お昼の時間として、仙台名物の牛たんと採りたての玉ねぎを炭火で焼いて味わう機会を設けました。 あわせて、畑でオニオンフライを作って楽しむ時間も用意し、採れたてならではの甘みや香りをその場で実感していただきました。 自分で土から抜いた玉ねぎを、その日のうちに焼いて食べる、揚げて食べるという流れは、 子供たちにとって非常にわかりやすく、記憶に残る学びになったと思います。
スーパーで購入した野菜を家庭で食べるのとは違い、「自分で採った」という実感があるだけで、 食べる時の表情も大きく変わります。普段は玉ねぎが得意ではないという子も、 「これ自分で採ったやつだよ」と言いながら口にしていた姿が印象的でした。 食育は知識だけで進むものではなく、体験と結びつくことで初めて心に残るものになるのだと、あらためて感じました。
社会的意義と今後への期待
いま、社会は先の見えにくい時代にあります。物価上昇、気候変動、災害の頻発、地域コミュニティの希薄化など、 子供たちを取り巻く環境は決して安定しているとは言えません。 そのような中で、自然の中で身体を動かし、親子で会話をし、地域の歴史や土地の再生に触れる機会を持つことは、 子供たちの健やかな成長にとっても、保護者の方の心のゆとりにとっても、とても重要だと感じています。
また、環境について学ぶことが「特別な人のための活動」になってしまっては意味がありません。 暮らしの延長線上で、野菜を育てること、収穫すること、食べること、地域の記憶を知ることが自然につながっていく。 その入口として、今回のような親子参加型の復興農地プログラムは非常に有効であると考えています。 学びのハードルが高くなりがちな時代だからこそ、楽しさの中に本質的な学びを織り込む取り組みを、 今後も地道に続けていく必要があると感じました。
今回の2回の実施を通じて、体験・親子時間・採りたての味からの学び、という3つの柱がしっかり形になり、 震災を知らない子供たちが、震災復興地で次世代へつなげる環境の学びを親子で深めるという目的に沿った活動となりました。 参加してくださった皆様の笑顔、真剣なまなざし、そして畑で過ごした時間の充実感は、 この取り組みの意義を何よりも物語っていたように思います。 今後もこうした機会を大切に積み重ね、地域の記憶と自然環境へのまなざしを、次の世代へ丁寧につないでまいります。
「震災の記憶を伝えることも、環境を学ぶことも、言葉だけではなかなか届かない時代だと感じています。 だからこそ親子で土に触れ、汗をかき、採れたてを味わう体験の中にこそ、次の世代へ手渡せる本物の学びがあると実感しました。」



